ホームページの修正を依頼したいのに制作会社から返信がない。サーバーやドメインの更新案内が届いているものの、誰に確認すればよいか分からない。
このような状況では、制作会社からの返信を待ち続けるだけでなく、自社で確認できる情報を整理し、Webサイトとメールを維持するための準備を始める必要があります。
ただし、焦ってサーバーを解約したり、ネームサーバーやDNSを変更したりするのは危険です。Webサイトだけでなく、同じドメインを使っているメールまで停止する可能性があります。
この記事では、ホームページ制作会社と連絡が取れないときに確認すべきことと、新しい制作会社へ安全に引き継ぐための手順を解説します。
最初に確認する5つのこと
制作会社と連絡が取れないときは、まず次の5項目を確認します。
- Webサイトが正常に表示されているか
- 会社のメールを送受信できているか
- ドメインやサーバーの更新期限が近づいていないか
- Webサイトに身に覚えのない変更や警告が出ていないか
- 自社でログインできる管理画面が残っているか
特に、Webサイトやメールがすでに停止している場合、ドメインの更新期限が迫っている場合、不審なページや転送が発生している場合は、通常の引き継ぎよりも優先して対応する必要があります。
制作会社から返信がないこと自体と、Webサイトの障害やセキュリティ上の問題は分けて考えましょう。
Webサイトとメールの状態を記録する
最初に、現在の状態を記録します。
- Webサイトのトップページと主要ページが表示されるか
- お問い合わせフォームを送信できるか
- フォームの通知メールが届くか
- 会社のメールを送受信できるか
- SSL証明書の警告が表示されていないか
- 身に覚えのないページや広告が表示されていないか
- 管理画面へログインできるか
- 最後に正常な更新ができた時期はいつか
エラー画面や警告が表示されている場合は、画面のスクリーンショットと確認日時を残します。
フォームを確認するときは、実際にテスト送信し、送信完了画面だけでなく通知メールまで確認してください。画面上では送信できたように見えても、通知先の設定やメール環境に問題がある場合があります。
不審な書き換えや転送、見覚えのない管理者、セキュリティ警告がある場合は、むやみに更新作業を進めず、アクセスログやバックアップを保全したうえで専門家へ相談します。
IPAも、安全なWebサイト運用には、バックアップ、アクセスログの確認、運用体制の整備などが必要だと案内しています。詳しくはIPA「安全なウェブサイトの運用管理に向けての20ヶ条」を参照してください。
制作会社への連絡方法を整理する
担当者個人のメールアドレスだけに連絡している場合は、制作会社の代表窓口やサポート窓口も確認します。
- 担当者のメールアドレス
- 制作会社の代表メールアドレス
- お問い合わせフォーム
- サポート用のチャットやチケット
- 代表電話
- 契約書や請求書に記載された連絡先
迷惑メールフォルダや、制作会社から利用している別のメールアドレスへ返信が届いていないかも確認してください。
連絡内容には、次の情報をまとめます。
- 対象となるWebサイトのURL
- 現在発生している問題
- いつから連絡が取れないか
- 確認したい情報
- 希望する回答期限
- 自社の担当者名と連絡先
例えば、次のように送ります。
件名:Webサイトの管理情報に関する確認依頼
いつもお世話になっております。
現在、下記Webサイトの管理状況を確認しています。
対象URL:
現在の状況:
確認したい情報:
- ドメインの契約先と契約名義
- サーバーの契約先と管理方法
- CMSの管理者情報
- Webサイトデータの保管状況
- 現在の保守契約の内容
恐れ入りますが、○月○日までにご回答をお願いいたします。
連絡した日時、連絡先、内容、返信の有無は一覧にして残します。後から新しい制作会社へ状況を説明するときにも役立ちます。
制作会社の法人情報を確認する
制作会社が法人の場合は、会社名や所在地が変更されていないか、登記記録が閉鎖されていないかを確認できます。
国税庁の法人番号公表サイトでは、法人の名称、所在地、法人番号、変更履歴などを検索できます。
ただし、法人番号公表サイトだけで、現在の営業状況や担当者の在籍状況まで確認できるわけではありません。契約書や請求書に記載された会社名と所在地に変更がないかを確認するために利用します。
個人事業主やフリーランスへ依頼していた場合は、契約書、請求書、過去のメール、振込先情報などを確認します。
契約書と納品物を確認する
制作会社と連絡が取れなくなった場合、契約書と納品時の資料が重要になります。
次の書類やデータを探してください。
- 制作委託契約書
- 保守・運用契約書
- 見積書、発注書、請求書
- サーバーやドメインの更新案内
- 制作会社から受け取った納品資料
- サイト構成図や仕様書
- デザインデータ
- ソースコード
- CMSの操作マニュアル
- アカウント一覧
- バックアップデータ
確認したいのは、Webサイトを誰が作ったかだけではありません。
- ドメインを誰の名義で契約しているか
- サーバーを誰が契約しているか
- Webサイトのデータはどこにあるか
- ソースコードやデザインデータが納品されているか
- 保守契約に含まれる作業は何か
- 契約の終了方法はどう定められているか
制作会社が契約を代行している場合でも、ドメイン、サーバー、メールがすべて同じ契約とは限りません。それぞれ分けて確認します。
著作権や制作データの引き渡し範囲は、契約内容によって異なります。公開中のWebサイトを閲覧できることと、元のデザインデータやソースコードを自由に利用できることは同じではありません。
契約内容に不明点がある場合は、契約書と納品物をそろえたうえで確認します。
自社でログインできる管理画面を確認する
手元に残っている権限を整理します。
ドメイン
- ドメイン管理画面
- 契約者名義
- 登録メールアドレス
- 更新期限
- 自動更新の設定
- ネームサーバー
- 認証コードの取得可否
Webサーバー
- サーバー管理画面
- FTP・SFTP・SSH
- データベース
- バックアップ
- SSL証明書
- 請求・契約情報
CMS・制作サービス
- WordPressなどの管理画面
- STUDIOなどのプロジェクト権限
- microCMSなどのCMS権限
- 管理者ユーザー
- 登録メールアドレス
- ソースコードの保管先
- 公開・デプロイ環境
メール
- メール管理画面
- 利用中のメールアドレス
- 転送設定
- メーリングリスト
- MX、SPF、DKIM、DMARC
- 過去メールの保存状況
計測・検索関連
- Google Analytics
- Google Search Console
- Google Tag Manager
- 広告アカウント
- ヒートマップなどの外部サービス
アカウントが見つかっても、すぐに旧担当者を削除する必要はありません。まず自社のアカウントでログインできることと、必要な権限が付与されていることを確認します。
ドメインの管理先が分からない場合
ドメインは、Webサイトとメールの両方に影響する重要な項目です。
「.jp」「.co.jp」などのJPドメイン名は、JPRS WHOISで登録情報を確認できます。
ただし、2026年8月13日時点では、JPRS WHOISに管理指定事業者名は表示されません。
JPRSの案内では、管理指定事業者が不明な場合、ドメイン名の登録者または連絡窓口の担当者がJPRSへ問い合わせ、本人確認ができた場合に管理指定事業者を案内するとされています。
詳しくはJPRS「JPRS WHOISで確認できること」を参照してください。
「.com」「.net」「.org」などのgTLDは、ICANN Lookupで管理レジストラやネームサーバーなどを確認できます。
ただし、登録情報から分かるレジストラと、実際に契約・支払いをしている販売代理店やサービス名が異なる場合があります。検索結果は、社内の請求書やメールを探すための手掛かりとして利用します。
詳しい確認方法は、ドメイン・サーバーの管理会社が分からないときの確認方法で解説しています。
ドメインを先に解約しない
制作会社を変更するからといって、現在のドメイン契約を先に解約してはいけません。
ドメインを廃止すると、Webサイトとメールが利用できなくなるだけでなく、一定期間の経過後に第三者が同じドメインを登録できるようになる可能性があります。
JPRSも、廃止したドメインが第三者に登録され、悪用される可能性について注意を呼びかけています。JPRS「ドメイン名の廃止に関する注意」を確認してください。
ドメインの移管では、現在の登録状態、契約名義、移管ロック、認証コードなどを確認してから手続きを進めます。
JPドメイン名の管理指定事業者変更については、JPRSの公式手順で確認できます。
サーバーとWebサイトのデータを保全する
サーバーへアクセスできる場合は、変更作業を始める前にWebサイトのデータを保全します。
一般的には、次の情報を確認します。
- Webサイトのファイル
- データベース
- 画像やPDFなどのアップロードデータ
- CMSの設定
- フォームの設定
- リダイレクト設定
- ソースコード
- 環境変数
- サーバーやアプリケーションのログ
- DNSレコード
バックアップは、同じサーバー内だけでなく、別の安全な場所にも保管します。
Webサイトに身に覚えのない変更や不審なログインがある場合は、上書きや更新を急がず、ログと現在のデータを残します。原因を確認する前に環境を大きく変更すると、調査に必要な情報が失われることがあります。
IPAの「情報セキュリティ10大脅威2026」でも、Webサイト停止時の対応体制や、適切に取得したバックアップからの復旧が挙げられています。IPA「情報セキュリティ10大脅威2026」を参照してください。
WordPressへログインできる場合
WordPressの管理画面へログインできる場合は、管理者ユーザー、登録メールアドレス、投稿や固定ページ、プラグイン、テーマなどを確認します。
登録メールアドレスを自社で管理している場合は、WordPress標準のパスワード再設定を利用できます。詳しくはWordPress.orgのパスワード再設定手順を確認してください。
WordPressの「ツール」からは、投稿、固定ページ、カスタム投稿、コメント、カスタムフィールド、カテゴリー、タグなどをエクスポートできます。
ただし、このエクスポートだけでは、テーマ、プラグイン、サーバー上のファイル、データベース、環境設定を含む完全なバックアップにはなりません。
対象範囲は、WordPress.orgの「Tools Export screen」で確認できます。
管理画面へ入れる場合も、バックアップを取得する前にWordPress本体、テーマ、プラグインをまとめて更新するのは避けましょう。現在の環境との互換性によっては、表示崩れや不具合が発生することがあります。
メール環境を先に確認する
Webサイトの引き継ぎで特に注意したいのが、同じドメインを利用しているメールです。
ドメインやネームサーバーを変更するときに、現在のメール設定を引き継がなければ、会社のメールを送受信できなくなる可能性があります。
引き継ぎ前に、次の情報を整理します。
- 利用中のメールアドレス
- 共有メールアドレス
- 転送先
- メーリングリスト
- メールの保存方法
- 現在のMXレコード
- SPF、DKIM、DMARC
- メールサービスの管理者
- 各端末の設定
Webサイトのサーバーとメールサーバーが同じとは限りません。
ドメインはA社、WebサーバーはB社、メールはC社という構成もあるため、Webサイトだけを見て判断しないことが重要です。
Google AnalyticsとSearch Consoleの権限を移す
制作会社がGoogle AnalyticsやGoogle Search Consoleを管理している場合は、自社のGoogleアカウントへ権限を追加してもらいます。
Google Analyticsでは、アカウントまたはプロパティの管理者がユーザーを追加できます。手順はGoogle Analyticsの公式ヘルプで確認できます。
Search Consoleでは、所有者がユーザーや別の所有者を追加できます。確認済み所有者は、HTMLファイル、HTMLタグ、DNSレコードなどの所有権確認方法と関係しているため、自社の所有権を確認してから旧担当者の権限を整理します。
詳しくはGoogle Search Consoleの所有者・ユーザー・権限の説明を参照してください。
過去の計測データを継続して確認するため、新しいプロパティを作り直す前に既存アカウントの権限を確認しましょう。
新しい制作会社が対応できること
元の制作会社と連絡が取れない場合でも、新しい制作会社へ相談することで、次のような対応を進められます。
- 現在のWebサイトと管理環境の調査
- ドメイン、DNS、サーバー、メールの整理
- 手元にあるアカウントと権限の確認
- 各事業者へのアカウント復旧手続きの整理
- 取得可能なデータのバックアップ
- 新しい管理環境への移管
- WordPressなどのCMS環境の確認
- 更新できない原因の調査
- 必要な部分改修
- 既存環境を利用できない場合の再構築
- 引き継ぎ後の保守・運用体制の整備
すべてのログイン情報が揃っていなくても、現在分かっている情報から調査は始められます。
一方、公開情報だけからパスワードを取得したり、契約者確認をせずにドメインを移管したりすることはできません。元データやバックアップが存在しない場合は、既存サイトをそのまま復元するのではなく、公開情報や手元の資料をもとに再構築する判断が必要になることもあります。
新しい制作会社へ伝える内容
相談時には、次の情報を共有すると状況を把握しやすくなります。
- WebサイトのURL
- 制作会社と最後に連絡できた時期
- 現在困っていること
- Webサイトとメールの稼働状況
- 更新期限が分かる契約
- 手元にある管理画面
- ログインできるアカウント
- 契約書、請求書、納品資料
- 制作会社へ連絡した履歴
- 希望する対応時期
- 今後どのように更新・運用したいか
パスワードや認証コードを、最初の問い合わせフォームへ直接記載する必要はありません。依頼先が決まってから、安全な共有方法を確認してください。
引き継ぎ前に避けたいこと
制作会社と連絡が取れないときほど、現在の環境を壊さないことが重要です。
次の操作は、影響範囲を確認してから進めます。
- ドメイン契約の解約
- ネームサーバーの変更
- DNSレコードの削除
- メールサーバーの変更
- サーバー契約の解約
- バックアップ前のCMS更新
- 管理者アカウントの一括削除
- ソースコードやデータベースの上書き
- 複数環境の同時移管
ドメイン、Webサーバー、メール、CMSを一度に変更すると、不具合が発生したときに原因を特定しにくくなります。
現在の設定を保存し、切り戻せる状態を作ってから順番に進めます。
安全に引き継ぐための手順
1. 現在の稼働状況を確認する
Webサイト、フォーム、メール、SSL、管理画面を確認し、問題がある箇所を記録します。
2. 制作会社へ正式に連絡する
担当者だけでなく、代表窓口や契約書に記載された連絡先へ連絡します。連絡日時と内容を残します。
3. 契約と支払いの情報を整理する
契約書、請求書、決済履歴、更新案内から、ドメイン、サーバー、メール、CMSの契約先と名義を確認します。
4. 手元にある権限を確認する
ログインできる管理画面と、ログインできない管理画面を分けて一覧化します。
5. データと設定を保全する
取得できるWebサイトデータ、データベース、画像、ソースコード、DNSレコード、メール設定、計測設定を保存します。
6. 新しい制作会社へ調査を依頼する
現在分かっている情報を共有し、引き継げる範囲、復旧が必要な項目、再構築が必要な項目を整理します。
7. 新しい管理権限を用意する
ドメイン、サーバー、CMS、Google関連サービスなどに、自社と新しい担当者のアカウントを追加します。
8. 影響範囲を確認しながら移管する
Webサイトとメールを止めないよう、DNS、サーバー、CMSなどを順番に移管します。
9. 引き継ぎ後の管理台帳を作る
契約先、契約名義、管理者、更新期限、支払方法、復旧手段を記録します。担当者や制作会社が変わっても、自社で管理状況を確認できる状態にします。
NOEMAで対応した引き継ぎ事例
NOEMAでは、他社が担当していたWebサイトについて、ドメイン、メール、サーバーの管理情報が十分に整理されていない状態から、保守業務を引き継いだ事例があります。
まず各サービスの契約・設定状況を調査し、ドメイン、Webサーバー、メール環境を移管しました。
また、Google Analytics、Google Search Console、XMLサイトマップが未導入だったため、引き継ぎ後にアクセス状況と検索状況を確認できる環境を整備しています。
対応内容は他社制作サイトの保守引き継ぎ事例で紹介しています。
よくある質問
制作会社から返信がない場合、どのくらい待つべきですか?
まず契約書やサポート案内に、返信や対応に関する条件が記載されていないか確認します。
通常の更新依頼であれば、営業日や休業日を考慮して代表窓口へ再度連絡します。ただし、Webサイトやメールの停止、ドメインの期限、セキュリティ上の問題がある場合は、返信を待つだけでなく、別の制作会社や専門家への相談を並行して進めてください。
元の制作会社と連絡が取れなくても変更できますか?
自社で管理しているアカウントや、契約者として復旧できる情報があれば、新しい制作会社への引き継ぎを進められる可能性があります。
ドメイン、サーバー、CMS、制作データの名義と権限を確認し、引き継げる範囲を整理します。
Webサイトが表示されていれば、すぐに対応しなくても大丈夫ですか?
現在表示されていても、更新期限、契約名義、バックアップ、メール設定が不明なままでは、障害や契約更新の際に対応できない可能性があります。
緊急の移管が不要な場合でも、管理状況の整理は早めに進めておくことをおすすめします。
ドメインが制作会社名義になっている場合はどうすればよいですか?
まず契約書、請求書、登録情報を確認し、誰が登録者として扱われているかを整理します。
そのうえで、現在の管理事業者やレジストラへ、必要な本人確認と手続きを確認します。契約上の認識に相違がある場合は、契約書をもとに専門家へ相談することも検討します。
WordPressの管理画面に入れれば引き継げますか?
記事や固定ページなどの確認はできますが、WordPressの管理画面だけで完全な引き継ぎができるとは限りません。
サーバー上のファイル、データベース、テーマ、プラグイン、画像、独自設定、ドメイン、メールなどを別途確認する必要があります。
制作データがなくてもWebサイトを作り直せますか?
公開中のページ、社内に残る原稿や画像、会社案内などをもとに再構築できる場合があります。
ただし、公開されていない元データ、独自システム、データベース内の情報などは、アクセス権限やバックアップがなければ再利用できないことがあります。現状を調査し、引き綘ぎと再構築のどちらが適切かを判断します。
連絡が取れない状態を、次の運用体制を整える機会にする
制作会社と連絡が取れないときに必要なのは、別の会社を探すことだけではありません。
ドメイン、サーバー、メール、CMS、計測ツールの契約と権限を整理し、自社で管理状況を把握できる状態へ整えることが重要です。
引き継ぎ後は、次の制作会社へ依存し直すのではなく、自社名義の契約とアカウントを基本にし、必要な担当者へ権限を付与する形にすると管理しやすくなります。
NOEMAでは、他社が制作・管理しているWebサイトについて、現在分かる情報から管理環境を確認し、引き継ぎ、移管、保守、改善まで支援しています。
制作会社と連絡が取れず、何から確認すべきか分からない場合は、Webサイト引き継ぎ・管理移管の支援内容をご確認のうえ、現在の状況をご相談ください。