ホームページを制作した会社との契約が終了したり、更新への対応が遅かったりする場合、別の制作会社へ保守を依頼できるのでしょうか。
結論から言えば、他社が制作したホームページでも、現在の契約、管理権限、サイトの構成を確認できれば、別の会社へ保守を依頼できる場合があります。
ただし、公開中のページが表示されているだけでは、保守を開始できるとは限りません。安全に更新するためには、CMSの管理画面だけでなく、ドメイン、サーバー、サイトデータ、バックアップ、外部サービスなどの確認が必要です。
この記事では、他社制作サイトの保守を依頼する前に確認したい情報と、一般的な保守の対応範囲、すぐに保守を始められないケースについて解説します。
他社が制作したホームページでも保守を依頼できる
ホームページの保守を、制作した会社だけが担当しなければならないという共通の決まりはありません。
現在の契約内容に問題がなく、必要なデータと管理権限を確認できれば、別の制作会社や保守会社へ依頼できる場合があります。
一方で、次の条件によっては、保守を開始する前に調査や環境の整理が必要です。
- ドメインやサーバーの契約名義が分からない
- CMSの管理者権限がない
- サイトデータやソースコードを取得できない
- 制作会社独自のシステムを使用している
- テーマやプラグインが独自に改修されている
- 更新前に戻せるバックアップがない
- 契約書にデータの利用や引き渡しに関する条件がある
- 外部サービスが旧制作会社のアカウントだけで管理されている
そのため、「他社制作だから対応できない」と判断するのではなく、最初に現在の状態を調査し、どこまで管理できるかを確認することが重要です。
保守を依頼する前に確認したい情報
すべての情報が揃っていなくても相談はできます。ただし、確認できる情報が多いほど、保守開始までの調査を進めやすくなります。
ドメイン
- ドメインを契約している事業者
- 契約名義
- 登録メールアドレス
- 管理画面へのログイン方法
- 更新期限
- 自動更新の設定
- ネームサーバーとDNSの管理先
ドメインはWebサイトの表示だけでなく、メールにも関係することがあります。
保守会社を変更するからといって、必ずドメインを移管する必要はありません。自社で契約と管理権限を把握できており、現在の環境を継続して利用できる場合は、契約先を変えずに管理体制だけを整える方法もあります。
「.jp」ドメインでは、登録者が所定の手続きによって管理指定事業者を変更できることがJPRSの規則で定められています。ただし、具体的な手続きはドメインの種類や契約事業者によって異なります。
サーバーとホスティング環境
- サーバーやホスティングサービスの名称
- 契約名義と支払方法
- 管理画面へのログイン方法
- FTP、SFTP、SSHなどの接続情報
- データベースの管理情報
- SSL証明書の管理方法
- バックアップの保存場所
- 契約プランと更新期限
CMSへログインできても、サーバーの管理権限がないと、十分なバックアップや障害時の復旧ができない場合があります。
反対に、StudioやShopifyなどのホスティング一体型サービスでは、一般的なレンタルサーバーのログイン情報が存在しません。使用しているサービスに応じて、確認すべき権限は異なります。
CMSとサイトデータ
- 使用しているCMSや制作サービス
- 管理者アカウント
- サイトのファイル
- データベース
- テーマやテンプレート
- プラグインや拡張機能
- ソースコードの保管場所
- 更新方法や公開手順
- テスト環境の有無
WordPressの場合、一般的なサイトを復元するには、サーバー上のファイルとデータベースの両方が必要です。WordPress公式ドキュメントでも、ファイルとデータベースは別々に保存されており、完全な復元には両方が必要と説明されています。
管理画面の「ツール」から取得できるエクスポートファイルは、投稿や固定ページなどを移すためのものであり、テーマ、プラグイン、サーバー設定を含む完全なバックアップではありません。
メール環境
- 使用しているメールアドレス
- メールサービスの契約先
- メール管理者
- MX、SPF、DKIM、DMARCなどのDNS設定
- 転送設定やメーリングリスト
- 過去メールの移行が必要か
- 各端末の受信設定
Webサイトとメールで同じドメインを使用している場合、DNS設定の変更によってメールの送受信へ影響が出る可能性があります。
保守会社の変更時にサーバーやネームサーバーも変更する場合は、Webサイトだけでなくメール環境を確認してから進める必要があります。
Google AnalyticsとSearch Console
- Google Analyticsのアカウントとプロパティ
- Search Consoleのプロパティ
- Googleタグマネージャー
- 自社が管理するGoogleアカウントの権限
- 現在登録されている管理者
- 計測タグや所有権確認に使用している設定
Google Analyticsでは、アカウントまたはプロパティ単位でユーザーと権限を管理できます。
Search Consoleでは、所有者、フルユーザー、制限付きユーザーなどで操作できる範囲が異なります。他のユーザーを追加できるのは所有者です。
旧制作会社のアカウントだけに権限がある場合は、自社のGoogleアカウントを追加してから引き継ぎを完了します。
保守として依頼できる主な業務
「ホームページ保守」に含まれる業務は会社や契約によって異なります。契約前に、基本料金へ含まれる内容と、追加費用になる内容を確認してください。
一般的には、次のような業務が対象になります。
技術的な保守
- Webサイトの稼働確認
- 定期バックアップ
- 障害発生時の一次確認
- CMS、テーマ、プラグインの更新
- 更新前後の表示・動作確認
- SSL証明書や契約期限の確認
- フォームの動作確認
- 不具合の調査と軽微な修正
- セキュリティに関する確認
- サーバーやDNS設定の管理
IPAは、Webサイトを安全に運営するため、OSやソフトウェアの脆弱性情報を継続的に確認し、更新や問題の回避を行うよう案内しています。
ただし、更新ボタンを押すだけで安全に保守できるとは限りません。WordPress公式ドキュメントでも、更新前のバックアップが案内されています。独自の改修や古いプラグインがある場合は、更新によって表示や機能へ影響が出る可能性があるため、事前の確認が必要です。
日常的な更新・運用
- テキストや画像の変更
- お知らせの更新
- ページの追加
- 営業時間や採用情報の変更
- バナーやリンクの差し替え
- 商品やサービス情報の更新
- CMSの操作支援
- 更新方法のマニュアル整備
更新回数、作業量、対応期限は契約によって異なります。「月に何回まで」「作業時間の上限」「原稿や画像を誰が用意するか」まで確認すると、契約後の認識違いを防げます。
記事制作と改善
- 記事テーマの検討
- 検索意図の整理
- 記事構成の作成
- 原稿の作成と入稿
- 既存記事の更新
- 内部リンクの整理
- アクセス状況の確認
- Search Consoleを使った検索状況の確認
- ページ導線の改善
- 次の施策の提案
技術的な保守と記事制作は、別の業務として扱われることがあります。
バックアップやCMS更新だけを依頼したいのか、記事制作やアクセス解析まで継続的に依頼したいのかを明確にすると、必要な支援を選びやすくなります。
NOEMAでは、サイトの状態を確認したうえで、技術的な保守だけでなく、更新、記事制作、SEO、アクセス解析などの継続支援についても、必要な範囲を整理します。
CMSやサービスによって引き継ぎ方法は異なる
WordPressの場合
WordPressでは、管理者アカウントだけでなく、サーバー、ファイル、データベース、使用中のテーマやプラグインを確認します。
特に独自テーマや独自プラグインが使われている場合は、次の点を調査します。
- 現在も更新できる構成か
- 更新によって不具合が発生する可能性があるか
- ライセンスの更新方法
- ソースコードを取得できるか
- テスト環境を用意できるか
- 問題発生時に元へ戻せるか
調査前に、更新や保守の可否を断定することはできません。
Studioの場合
Studioでは、プロジェクトへメンバーを招待し、オーナー、支払いオーナー、編集者などのロールを設定できます。
Studio公式ヘルプでは、クライアントへプロジェクトを引き渡す場合、クライアントのアカウントをプロジェクトへ招待し、オーナーまたは支払いオーナーへ変更する手順が案内されています。
制作会社のアカウントだけで管理せず、自社でもプロジェクトの管理権限を持つことが重要です。
保守会社にどの権限を付与するかは、更新内容や支払い管理の担当範囲に応じて決めます。
Shopifyの場合
Shopifyでは、ユーザーごとに役割と権限を設定できます。また、Shopify Partnerへコラボレーターとして必要な範囲のアクセスを許可できます。
保守や改修を依頼するために、ストアオーナーのアカウントやパスワードをそのまま共有する必要はありません。依頼内容に必要な権限を確認し、ユーザーまたはコラボレーターとして追加します。
ストアの所有権を変更できるのはストアオーナーです。通常の保守担当者へ所有権を移す必要があるとは限らないため、自社が所有権を保持したまま、作業に必要な権限を付与する方法を検討します。
独自開発やヘッドレスCMSの場合
Next.js、Astro、microCMSなどを組み合わせたサイトでは、CMSの管理画面だけでなく、次の情報が必要になる場合があります。
- GitHubなどのソースコード管理
- ホスティングサービス
- ビルドと公開の設定
- 環境変数
- CMSのAPI設定
- フォームやメール配信サービス
- 外部データベース
- DNSとドメイン
- 障害時の復旧方法
構成はサイトごとに異なるため、共通の引き継ぎ手順はありません。実際の構成と権限を確認して、必要な情報を整理します。
保守をすぐに始められないケース
次のような場合は、通常の保守を開始する前に調査、復旧、改修、再構築が必要になることがあります。
- 契約者や管理権限を確認できない
- サイトデータを取得できない
- バックアップを作成できない
- ソースコードと公開中のサイトが一致していない
- 使用中のCMSやソフトウェアが古く、現在の環境で安全に更新できない
- 制作会社独自のシステムへ依存している
- 独自機能の仕様やソースコードが残っていない
- 不正アクセスや改ざんが疑われる
- 契約やデータの利用条件を確認できない
- 更新した場合の影響範囲を判断できない
このような状態でも、相談や現状調査から始めることはできます。ただし、現在の環境をそのまま引き継げるか、改修やリニューアルが必要かは、調査結果によって判断します。
他社制作サイトの保守を始める手順
1.現在の困りごとを整理する
更新できない、不具合がある、制作会社を変更したい、記事制作を依頼したいなど、保守を検討した理由を整理します。
2.手元にある情報を共有する
WebサイトのURL、契約書、請求書、管理画面、ログイン情報、過去のメールなど、確認できる情報を共有します。
パスワードや認証コードは、問い合わせフォームや通常のメール本文へ記載せず、依頼先が案内する安全な方法で共有してください。
3.契約と管理環境を確認する
ドメイン、DNS、サーバー、メール、CMS、計測ツールなどについて、誰が契約し、誰が管理しているかを確認します。
管理会社が分からない場合は、ドメイン・サーバーの管理会社が分からないときの確認方法も参考にしてください。
4.バックアップと現在の設定を保存する
移管や更新を始める前に、取得できるデータと設定を保存します。
バックアップが存在するだけでなく、何が保存され、どのように復元するかを確認することも重要です。
5.初期調査を行う
サイトの構成、ソフトウェアの状態、独自機能、不具合、セキュリティ上の問題、更新方法を調査します。
この段階で、現在の環境を継続できるか、初期改修や移行が必要かを判断します。
6.保守範囲を決める
次の内容を契約前に整理します。
- 定期的に実施する作業
- 更新や記事制作の範囲
- 対応できる不具合
- 別途見積もりになる作業
- 連絡方法
- 対応時間
- 緊急時の連絡方法
- バックアップと復旧の範囲
- 契約終了時に返却される情報
7.新しい管理者を追加する
可能なサービスでは、既存アカウントのIDとパスワードを共有するのではなく、自社と新しい保守担当者のアカウントを追加します。
作業に必要な権限だけを付与し、多要素認証や復旧手段も設定します。
8.管理情報を一覧化する
引き継ぎ後は、契約先、名義、管理者、更新期限、支払方法、権限、バックアップ、復旧方法を一覧にします。
次に担当者や制作会社が変わっても、自社で管理状況を確認できる状態を残します。
保守費用はサイトの状態と対応範囲で変わる
他社制作サイトの保守費用は、公開されているページ数だけでは判断できません。
費用へ影響する主な項目は次のとおりです。
- 使用しているCMSやシステム
- サーバーと公開環境
- 独自機能の有無
- 現在発生している問題
- バックアップとテスト環境の有無
- 更新頻度
- 記事制作の有無
- アクセス解析や改善提案の有無
- 障害時の対応範囲
- 複数サイトや複数言語への対応
初期調査や管理移管の費用と、保守開始後の月額費用が分かれている場合もあります。
金額だけで比較するのではなく、「何を確認したうえで保守を開始するか」「どこまでが契約に含まれるか」を確認することが重要です。
よくある質問
ログイン情報が揃っていなくても相談できますか?
相談できます。
ただし、既存環境をそのまま保守できるかは、契約名義、アカウントの復旧方法、サイトデータへのアクセス状況によって異なります。
制作会社と連絡が取れない場合は、ホームページ制作会社と連絡が取れないときの対処法もご確認ください。
制作会社を変更するとドメインやサーバーも変更しますか?
必ず変更するわけではありません。
現在の契約を自社で把握でき、必要な権限を管理できている場合は、既存環境を継続して利用できることがあります。
移管が必要かどうかは、契約名義、管理体制、料金、技術的な構成、将来の運用方針を確認して判断します。
WordPressの管理者権限だけで保守できますか?
対応内容によって異なります。
記事更新などは管理画面だけで対応できる場合がありますが、完全なバックアップ、障害復旧、サーバー設定、独自プログラムの修正には、サーバーやデータベースなどの権限が必要になることがあります。
保守と一緒に記事制作も依頼できますか?
記事制作へ対応しているかは、依頼先によって異なります。
依頼する場合は、記事の企画、構成、執筆、確認、入稿、公開後の分析のうち、どこまで含まれるかを確認してください。
NOEMAでは、サイトの保守・更新に加え、検索意図を踏まえた記事制作や公開後の確認についてもご相談いただけます。
今の制作会社との契約を解約してから相談すべきですか?
先に解約する必要はありません。
データや管理権限を受け取る前に契約を終了すると、確認や引き継ぎが難しくなる可能性があります。まず契約内容と引き渡し条件を確認し、新しい依頼先と移行手順を整理してから進めます。
制作会社を変更する全体の流れは、ホームページ制作会社を変更する方法で解説しています。
他社制作サイトを、継続して管理できる状態へ
他社が制作したホームページでも、契約、権限、データ、技術的な構成を確認できれば、別の会社へ保守を依頼できる場合があります。
大切なのは、保守会社を変更することだけではありません。
自社がドメインやサーバーの契約を把握し、必要な権限を持ち、更新や改善を継続できる状態へ整えることが重要です。
NOEMAでは、他社が制作・管理しているWebサイトについて、現在分かる情報から管理環境を確認し、引き継ぎ、保守、更新、記事制作、改善へつなげる支援を行っています。
対応内容は、Webサイト引き継ぎ・管理移管の支援内容でご確認いただけます。
実際の対応については、他社制作サイトの保守引き継ぎ事例をご覧ください。
管理情報が揃っていない場合も、現在分かる状況からご相談ください。
参考にした公式情報
- WordPress.org「Updating WordPress」
- WordPress.org「Backups」
- 「Tools Export screen」
- Studio Help「プロジェクト参加メンバーのロール(権限)を管理する」
- Studio Help「作成したプロジェクトをクライアントへ引き渡したい」
- Shopifyヘルプセンター「ユーザー管理」
- Shopifyヘルプセンター「所有権の変更または移管」
- Google Analyticsヘルプ「ユーザーおよびユーザーグループの追加、編集、削除」
- Search Consoleヘルプ「所有者、ユーザー、権限の管理」
- JPRS「ドメイン名の管理指定事業者の変更」
- IPA「安全なウェブサイトの作り方」